1969年、15歳で料理人を志し、札幌グランドホテルにて
その道を歩み始めた三國さん。

わずか2年で料理長になった後、帝国ホテルに移ることができたのですが、
スタートは、なんと、再び鍋洗いから。
それでも、
「人が24時間働くところを26時間分働いてみせる」
という心意気で、目の前の仕事に取り組み続けるだけでなく、
鍋に残っているソースがあったら手にとって舐めるなど、
帝国ホテルの"味"を貪欲に盗んでいったのです。

そして、誰よりも確実に、誰よりも早く仕事をこなし、
料理人としての研鑽を積み、
次第に信頼を勝ち取っていった三國さんに
人生を変える大きなチャンスが舞い込んできます。

『駐スイス大使付きコックへの抜擢』です。

当時、帝国ホテルで総料理長を務めていた村上信夫氏が、
その働きぶりに可能性を見出したのでした。
パートタイマーとして働いていた20歳の青年の抜擢は、
三國さんの名前を一気に世に知らしめることになります。

しかし…、チャンスをものにしたのはいいものの、
帝国ホテルでは鍋や皿を洗う見習いだったため、
料理を作ることがなかった三國さん。
大使夫妻からも「大丈夫なのか…」と不安を呈されたほどだそうです。

しかし、ここでも三國さんは、自身の腕を磨き続けるために
更なるアクションを起こしていきます。

大使夫妻の夕食を作り終えた三國さんは、
二つ星レストランの厨房へ飛んで行き、
見習いとして仕事をしながらディナーコースのメニューの作り方や
テーブルセッティングなどを必死で学び続けたのです。

異国の地。突然の東邦人の来訪に、
どこも最初は「いらない」と断るそうですが、
たいていのレストランは三國さんの気迫に押されて受け入れてくれたのだとか。
その甲斐あって、大使館主催のパーティーは好評を博し、
2年契約のところを、3年8か月も大使館に務めることになったのでした。

実績を築き上げた三國さんは、
その後も、名だたる3つ星レストランシェフというチャンスを手にしていきます。
すぐさまオーダーをこなさせられ、その場で完璧にできなければ後がないという、
まさに武士の他流試合のような中で、腕に磨きをかけ続けてきたのです。

それから、20年。
今では世界各地で自身の料理を披露するイベントを開催し、
『世界のミクニ』と呼ばれるまでになった三國さん。

あるインタビューで、「成功の秘訣は？」と聞かれた際に、
三國さんはこのように応えました。

「チャンスというのは準備をしていないとつかめないもの。
だから、とにかくできる限りの渾身の準備をして『次』を掴むんです。」と。