80歳 世界最高齢でのエベレスト登頂と聞くと、

『三浦さんは超人的な肉体を持っている』

などと思われてしまうかもしれませんが、
実はそんなことはありませんでした。

なんと、三浦さんは“先天的な心臓病”を患っており、
これまでの数々の挑戦は、その難病との戦いの歴史でもあったのです。

それは70歳でエベレストに登った時のこと。

富士山の頂上くらいの高度に到達した時、
すでに心臓病の症状である不整脈が出始めていました。
携帯している心電計で脈拍を測ると、
表示されるのは“計測不可能”の文字。

その時、すでに200以上の脈拍が出ていたといいます。
通常であれば登山を断念するところですが、
三浦さんは決して諦めませんでした。

体をかばいながら、一定のペースで歩を進めていきます。
エベレストの山頂付近は
酸素が通常の3分の1程度、気温は－30℃。
その環境では、
20歳の登山家の肉体年齢が90歳程になるといいます。
心臓疾患を持った老体には、
いったいどれだけの負担がかかっていたのか、想像すらできません。

少しでも気を抜くと、
すーっと遠のいていく意識…。
ハッと気がつくと、心臓が動き始める。
急いで脈を測定すると、28か30くらいしか動いていない。

そんな状況を何度も経験しながらも、諦めず、
70歳でのエベレスト登頂に成功したのです。

75歳になった時には不整脈がさらに悪化。
普段の生活で階段を登った程度でも
心臓に異常がでるような状況でした。
当然のごとく、医者から引退を勧められたそうですが、
彼は心臓手術を受けた後、再度エベレスト挑戦を決意。
そして2度目の登頂に成功したのです。

その翌年、スキー場で事故に遭い、
骨盤と肋骨を骨折するという重傷を負っても、
“諦める”という言葉は三浦さんの辞書にはなく、
過酷なリハビリの末、見事、奇跡的な回復を遂げたのです。

そして、来年80歳での登頂に向けて、
今もなおトレーニングを続けている三浦さん。

『なぜ、そこまでしてエベレストを目指すのですか？』

誰もが投げかけるこの質問に
三浦さんはこう応えるのでした。

【 First,Forever 】

『最初に壁を破った人こそ、永遠』

人類の可能性に自ら挑戦し、
その扉を開くことに、生きる意味を見出す。

それが《三浦雄一郎》という生き方なのです。