昨シーズンの開幕前、
日本ハムの評価が低かった理由のひとつは、
栗山さんの経験不足でした。

現役生活はわずか7年。
6年目にはゴールデングラブ賞を獲得しますが、
翌年には激しいレギュラー争いで勝ち残ることができず、引退を決断。
その後はスポーツキャスターとして活躍したものの、
コーチの経験すらないまま監督に就任したのです。

「素人監督」では優勝は無理だ、という
厳しい意見も寄せられていました。


そんな栗山監督が就任後すぐに行ったのは、
個々の選手との個人面談でした。

選手個々の話に耳を傾け、
一人ひとりに自分の方針を伝えました。
そしてキャンプ中もオープン戦の合間も、
常にグランドを走り回り、
一人ひとりの選手に声をかけ続けたのです。

そして開幕。
栗山監督の采配は、序盤から吉と出ました。

開幕第1戦は、
大抜擢された齋藤祐樹投手が好投し、
西武相手に完投勝利。

第2戦では、9回裏に代打攻勢で同点に持ち込み、
続くキャプテン・田中賢介のサヨナラヒットで、
開幕2連勝を果たしました。

象徴的だったのは、
ヒーローインタビューを受けた田中選手の、
「今日のようなドラマチックな野球が栗山野球です！」という言葉。
開幕第2戦にして、栗山野球の浸透を感じさせるものでした。

その後も栗山監督の選手起用は次々に大当たりし、
4番中田選手や吉川投手が殻を破り、ベテラン勢も力を発揮。
リーグ優勝を果たしたのです。

シーズン終了後、多くの選手が
「監督のために」
「監督を胴上げしたい」
という気持ちで闘ったと語っています。

栗山監督はシーズン中も、
グランドを走り回って直接選手と話をし、
記者たちにも「気づいたことがあったら教えてくれ」と
腰低く接しました。

そして自宅では、睡眠時間を削って采配を研究し、
選手たちにどんな言葉でどう伝えるか、
考えを巡らせていました。

愛情あふれる栗山監督のメッセージは、
そんな監督の“伝える努力”によって
個々の選手に浸透していったのです。

栗山監督は、
“伝わる”ように伝えることができる
達人なのかもしれません。