北海道の大学を卒業後、
上京して編集者となった山本さん。
編集者という多忙な仕事に就いたにもかかわらず、
週に1度はシナリオの学校で勉強。

やがてラジオドラマの賞を受賞し、
少しずつ脚本の仕事が増えていきますが、
最初の4年間は編集者と脚本家を兼業していました。

ミスの許されない編集者と、
入念な取材や発想力が要求される脚本家。

どちらも体力的に大変な仕事です。
山本さんは4年間、その両立をやり遂げて、
ようやく、デビュー8年目に
「ゲゲゲの女房」でブレイクしたのです。

「ゲゲゲの女房」は、
「ゲゲゲの鬼太郎」で知られる漫画家
水木しげるさんの妻・武良布枝さんの自伝です。

布枝さんは、水木さんとお見合いして、たったの5日で結婚、
あっという間に極貧かつ滅茶苦茶な漫画家生活に巻き込まれます。

それでも、夫や周囲の人々との交流を振り返って、
「人生は終わり良ければすべてよし」と語ったのがこの本です。

山本さんは、この自伝に深く共感。
人生の幸、不幸は入り口では決まらない、
人と人とが寄り添って暮らす面白さを描きたい、と
「ゲゲゲの女房」執筆にのめり込みます。

執筆のために読んだ本はなんと200冊。
ドラマの放送期間・半年に対して、
執筆にかけた時間は、3倍の1年半に及びました。

そこまでのめり込んだ、そのわけは、
「人間を描こうと思ったら
　その時代“背景”を押さえないと嘘になる。
　人生のすべてを投下しないと太刀打ちできない」
という強い想い。

その想いが乗り移ったように、
初回視聴率が過去最低だったこのドラマは、
終わってみれば、
その年2番目の高視聴率ドラマとなったのです。

最終回は泣きながら執筆したという山本さん。
1年半を振り返って残した言葉は、
『“精一杯”をやり尽くした』というものでした。

深い共感に突き動かされ、
背景まで入念に調べあげて創造する、
そんな“精一杯”の努力。

その“精一杯”の努力があったからこそ
多くの人の心を動かすものを
創り出すことができたのかもしれません。