奥山さんの人生は
常に「攻めの姿勢」で貫かれています。

大学卒業後、
デザイナーとして日本で就職する選択肢を捨てて、
世界的デザイナーの輩出で有名な、
アメリカの「アートセンター・カレッジ・オブ・デザイン」へ留学。

40人のクラスで、
卒業できたのは11人という厳しい環境に
自ら飛び込んだのです。

卒業後は、
アメリカの自動車産業でビッグスリーと言われる
ＧＭ社に入社しますが、
4年目にポルシェに誘われ、
キャリアアップを目指してＧＭ社を退社。

その後、再びＧＭ社に戻り、管理職となりますが、
イタリアの名門デザインスタジオ
ピニンファリーナ社に入社するため、再び退社したのです。

給料が3分の1になるにも関わらず、
「自分の代表作を創りたい」という想いに駆り立てられての決断でした。

そして43歳の時、
フェラーリ創業55周年という一大イベントが訪れ、
創業者の名を冠したメモリアルカーのデザイナーとなり、
その想いを実現したのです。

しかし奥山さんは、いたずらに
「攻めて」いたわけではありません。

就職する時も転職する時も、常に、
「会社が自分に何をしてくれるか」だけでなく、
「自分は会社にどんなプラスを与えられるのか」を
意識していたのです。

その意識はピニンファリーナ社の
入社試験を勝ち抜く時にも活かされました。

奥山さん自身のピニンファリーナ社への要求は、
「これが自分の作品だ」と言えるようなデザインを
担当させてほしいという想いでした。

しかしとんでもない数のデザイナーが応募してくる
ピニンファリーナ社の入社試験は、
自分の熱意だけで勝ち抜くことはできません。

奥山さんは、
「自分がピニンファリーナ社に入れば、
外国人としての視点を活かして、
イタリア人よりイタリア人らしいデザインができる」
ということを猛烈にアピールしたのです。

自分の熱意を訴えるだけでなく、
「自分が相手に何を与えられるか」を考え、
アピールする。

その姿勢こそが奥山さんを
世界的デザイナーに至らしめたと
言えるのではないでしょうか。