小菅さんが係長となった時、
旭山動物園は入場者数の減少のため、
存亡の危機にありました。

そこで小菅さんが最初に行なったのは、
飼育係全員で勉強会を繰り返すこと。

「どうして来園者が増えないのか」
「動物園は何のためにあるのか」と
動物園の存在意義を徹底的に探りました。

そして“命を伝える”動物園を目指す、
という目標を全員で定め、
その第一歩として
飼育係が来園者と動物の距離を縮める、
「飼育係によるワンポイントガイド」を始めたのです。

ある大雨の日、
「来園者がいないから今日はやめよう」という声が上がります。

しかし、小菅さんは
「やると決めたことはやり続ける」と譲らず、

探し出したわずか4人の来園者を前に、
全員、ずぶ濡れになりながらガイドを行いました。

こうした努力が次第に身を結び、
少しずつ来園者が増加し、
市の予算をも動かす原動力となったのです。

全員で目標を定め、
やると決めたことを全員でやりきる。

旭山動物園は
小菅さんを中心に
そんな団体戦をやり遂げたのです。

小菅さんのこの強烈なリーダーシップは
北海道大学の柔道部で培ったものだと言います。

小菅さんは北大時代にも主将として
弱小柔道部を再建しているのです。

しかし、
小菅さんが北大に合格したのは
なんと3度目のこと。

高校時代に北大・柔道部の練習に参加した時の感激が忘れられず、
2年の浪人生活を経て
ようやく北大に合格したのです。

そして大学入学後は
大動物を診る獣医の姿に感激し、その道を目指します。

しかし柔道のやりすぎで腕が太いため、
牛の直腸を探る検査ができないことがわかり、
卒業間際にその夢を断念。

しかし意に沿わない就職はしたくない、と
今度は就職浪人を決意。

そこに偶然、旭山動物園の求人があり、
牛はダメでも象の検査はできるだろうということで、
獣医兼飼育係としての人生をスタートしたのです。

多くの人は
望んだ結果を得ることができなかった時、
仕方なく代わりの結果を求めるものですが、

小菅さんは
安易に代わりの道に進むことなく、
“初志貫徹”した結果、道が拓けたのです。

その揺るがない“初志貫徹”の姿勢が
柔道部再建でも動物園再建でも
発揮されたのではないでしょうか。